ペットの基礎知識 特別篇
【白内障 1】

「白内障」について、質問を受ける機会が増えています。

そこで、今まで質問に答えてきた内容をまとめてみました。


『白内障ってどんな病気?』

[白内障]

白内障は眼球内の水晶体が白く濁る病気です。

水晶体は、カメラでいえばレンズに相当します。

レンズの白さと比例して、写真の画像も不鮮明になってくるのと同じで、 水晶体の白濁が進めばそれに伴って見えにくくなっていきます。

中高齢の犬で多くみられますが、若い犬や猫でも起こることがあります。

初期のうちは何となく白い程度なのでよく観察しないと気づきません。

進行すると、

・昼間でも暗い所を嫌がる
・暗いところでは動きが遅くなる
・夜の散歩で電柱などにぶつかる
・動く物を眼で追わない

など、視力低下を疑わせる症状がみられます。


[核硬化症]

白内障と似たものに核硬化症があります。

水晶体(レンズ)の中心には「核」と呼ばれる硬い部分があります。

「核」はまるで玉ネギのように何層もの薄い層でできていて、この層は年をとるたびに中心に向かってどんどん圧縮されていきます。

圧縮された「核」に光を当てると、光が乱反射してまるで水晶体が濁ってしまったかのように白く見えるのです。

一見すると白内障と同じように見えますが、視力低下は軽度で物にぶつかることはほとんどありません。  

しかし、核硬化症の子も白内障になりますから、注意は必要です。


『白内障、どんな前兆がみられるの?』

[前兆]

水晶体(レンズ)が白くなる変化は、縁から始まり、中心へと進んでいきます。  

早期の白内障では、

白濁は水晶体(レンズ)の縁にだけ見られ中心は透明のまま

なのです。  

つまり、普通に見て、水晶体(レンズ)が白く見えたら白内障が進行してしまっている状態なので、それはもう早期の白内障ではありません。

白内障を早期に発見するためには、水晶体(レンズ)の縁をチェックする必要があります。

しかし、このチェックにはちょっと手間がかかります。

水晶体(レンズ)の様子をよく見るためには明るさが必要ですが、明るいと瞳孔が小さくなって水晶体(レンズ)の中心しか見えなくなってしまいます。

水晶体の(レンズ)の縁を調べるためには、明るくても瞳孔が小さくならないように散瞳剤の点眼が必要になります。

この検査は動物病院で行うことができます。

  


『白内障になって本人(犬や猫)はどんな気持ちなの?』

犬も猫も、はとんどが生まれたときから近視です。

水晶体の厚さが人の約2倍ほど厚いので、近くのものにはピントを合わせやすいですが、遠くにあるものや70cm以内のごく近いものにはピントを合わせにくいのです。

犬や猫の視力を人の視力で現すのはなかなか難しいですが、あえて言うなら、人の平均的な視力を1.0としたら、犬の視力は0.3、猫で0.1くらいだろうと言われています。  

しかし、動体視力は優れています。

1秒間に30フレームを表示するテレビ画像などは、犬や猫が見るとコマ送りにしか見えないそうです。  

このように、犬や猫は、人のようには視力が発達していないため、視力の低下による不便さは人ほどではないと推測されます。

しかし、見えにくくなれば、確実に生活に支障が出てきます。  

早期に発見して、早期に治療を始めるのが望ましいのは、他の病気と同じです。

白内障は、

中医学的弁証(西洋医学の診断にあたります)では、 肝腎陰虚血瘀、です。

治則(導かれた証に対して実際に治療を行う上でのルール)は、補血益腎活血養肝破血化瘀、になります。

 

中医学弁証

肝腎陰虚 
 
内熱が肝の血の流れ・腎の蔵精を失調させる病態

 肝と腎はともに大切な臓器であり、両者は密接な関係をもつ。

 肝は血を貯蔵し、腎は精を貯蔵する働きがあり、精と血は互いを生み

 出す材料となる。精も血も身体を構成する陰液の主要な部分。

 従って、腎陰()不足は必然的に肝陰不足をもたらし、肝陰不足も腎

 陰()不足を引き起こす。しばしば肝と腎の陰虚が同時に出現する。

     
肝陰虚
 
 
血が不足したために肝を養えないことから起こる病症

     
腎陰虚
 
 腎精の消耗が多いため腎陰が不足し、腎陽の興奮が抑えられなくなる病症

          
血瘀
     
 
鬱血(うっけつ)や血行障害など、血の流れの滞り、またはそれによって起きる様々な症状や疾病を瘀血といいますが、血瘀はその前の段階。


治則 
 
補血益腎
 
 血を養い、腎の機能を高める

活血養肝 
 血の流れを良くし、肝の機能を高める

破血化瘀 
 破血作用により瘀血を改善します。

 破血は、抗凝血作用や血栓を溶かす作用のことで、活血の一つ。

 

処方  
 
ペットの状態と治則から、その子に合った処方の漢方薬を選択します。

中医学(漢方)について


次回は治療について…

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