〜 ワンちゃんの認知症 認知障害症候群 〜
【 対策 編 】
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認知症は、何となく老化で反応が鈍くなる感じから始まります。

認知症は進行性の病気なので、時間と共に症状もだんだん強くなっていきます。
そうなると、いっしょに暮らすにあたって困る行動も出てきます。

この問題となる行動の代表的なものとその対処法をいくつか紹介します。 参考になれば嬉しいです。


1.歩くことを止められない:徘徊

2.食欲の変化・過食

3.食欲低下

4.夜鳴き

5.吠え続ける

6.理解力の低下

7.トイレの失敗

8.性格の変化

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1.歩くことを止められない:徘徊

認知症の症状として、目的も無くうろうろ歩き回る行動があります。
何時間でも、同じ場所で、円を描くようにぐるぐると歩き回ります。
方向転換や後退することができなくなっているので、部屋の角にはまりこんだり、家具のすき間に入ってしまうと、動きが取れなくなってしまいます。

その時には、追い詰められたように困って助けを求めて大声で鳴くことがしばしばです。

歩き回るのを無理に止めさせると悲痛な声で鳴くことも多く、止めさせることはかなり難しいことです。

現実的な対応としては、

・好きなだけ歩き回らせてあげられる環境を準備してあげる
・事故の防止
・迷子対策

などが考えられます。

・好きなだけ歩き回らせてあげられる環境を準備してあげる
ワンちゃんが歩き回れる広さがあり、行動範囲を限定できる場所を用意します。

1部屋用意できれば最高ですが、サークルなどで作っても充分です。
そのとき、はまり込みそうな所はふさぎ、ぶつかっても物が落ちてこない気遣いは必要です。

サークルにぶつかって痛そうなら、内側にお風呂マットのような強度があってクッション性のあるものを当てると良いでしょう。
小型のワンちゃんでれば、子供用の家庭用ビニールプールが使えるかもしれません。

歩き疲れると横になったり寝てしまうこともあります。
床にはタオルやマットなどを敷いてあげてください。

・事故の防止
思わぬところに行ったり、落ちたり、ぶつかったりします。
信じられないようなことが起こることがあります。
思いも寄らないものを口にすることもあります。
充分に気をつけてあげてください。

・迷子対策
外に出すときには常に目を離さないようにしましょう。
家から離れてしまったら自力で戻ってくることはまずできません。
なるべくマイクロチップを装着させてあげてください。
また、保護した人がすぐわかるような場所に名前や連絡先を書いておくのも大切です。



2.食欲の変化・過食

歳をとるに従って減っていた食欲が、認知症を発症すると異常に増してくることがあります。
認知症に記憶力の低下や満腹中枢の異常を伴うと、さっきあげたばかりなのにすぐに食事を欲しがるという状況になります。

また、その食べ方も激しく、あげただけ食べてしまい、まるで何日も食べてなかったようなような食べっぷりのこともあります。

しかし、どんなに食べても太らないワンちゃんもいます。
これは、自律神経の異常が原因で、たくさん食べているのに痩せてしまうという現象がみられることもあります。

「太らないなら、食べたいだけ食べさせていいんじゃないの。」
「残り少ない犬生なんだし、食べたいものを好きなだけ食べさせてあげようよ。」
という意見も耳にしますが、
食事の量が増えると肥満になる、お腹を壊す(下痢、軟便)、嘔吐する、など胃腸に負担をかけ、糖尿病や肝臓病などを発症するリスクも高まります。

一日の食事量は増やさずに、食事の回数を3〜5回にふやして、空腹の時間を短くしてあげると落ち着いてきます。



3.食欲低下

逆に、食べ物に興味を示さなくなり、食欲が低下してしまうことがあります。
これは1日の大半を寝て過ごすワンちゃんに多く、あまり動かないので空腹になりにくいことや、空腹であることを自覚できないことが原因のようです。

食事量が減れば衰弱に繋がるので、大好物を与えたり、食事を温めたり、手から与えたり、工夫が必要です。

*食欲の増加でも食欲の減退でも、認知症以外の病気が原因の可能性があります。
認知症と即断しないで、必ず獣医師の診察を受けてください。



4.夜鳴き

ワンちゃんの認知症の症状の中でも、夜鳴きは飼い主さんにとって大きな悩みの一つです。
夜泣きが深刻な問題になる大きな理由は二つあり、
 
1.飼い主さん自身も睡眠不足になり、生活リズムが崩れること。
ワンちゃんの夜鳴きがあると、飼い主さんも睡眠が充分に取れなくなります。
睡眠不足が続くと、昼間の生活にも支障をきたすようになるでしょう。
 
2.ご近所への迷惑
  「ワンちゃんの夜鳴きがご近所へ迷惑をかけている」と思う飼い主さんのストレスは大きなものがあります。

昼間に寝かせないようにする
認知症による睡眠サイクルの変化が原因で、昼間にしっかり寝てしまうことがあります。昼間によく寝てしまうと、夜の睡眠が浅くなったり、眠れなくなってしまいます。

これが原因なら、昼間に散歩へ出かけたり遊んだりと寝かせないようにすることで改善されることもあります。

飼い主がいることを感じさせて、安心させる
視力や聴力などの感覚が衰えてくると、近くにいる飼い主さんや動物の気配を感じにくくなります。
気配を感じられないことで寂しさや孤独感が生まれ、認知症によって感情のコントロールができなくなってくるのと相まって、不安な気持ちを抑えられなくなることがあります。

そうすると、子どものワンちゃんがお母さんを捜すように鳴いてしまいます。
このような「不安な気持ち」が原因のときには、ワンちゃんに飼い主さんの存在がわかるようにしてあげると改善することがあります。
同じ部屋など、飼い主さんの気配の届く近さに寝床を置いてあげるといいでしょう。

また、飼い主さんの匂いの付いたタオルや毛布などを寝床に入れてあげるのも良いと思います。

日光浴
認知症の予防と症状改善に、日光浴は効果があると人でわかってきています。
体内時計の調節とビタミンDの補給が目的です。

昼間に日光を浴びさせるようにすると、体内時計を正常に戻す助けとなります。
特に朝日を浴びると効果的で、目が覚めてからの4時間の間がポイントのようです。

陽の光に含まれる紫外線は、ビタミンDの最大の供給源です。
紫外線が皮膚に当たると、体内でプロビタミンD3からビタミンDが生産されます。

人では、ビタミンD不足と高齢者の認知症の発症リスクには関連があることがわかってきています。
ビタミンDのレベルが下がるほど、発症のリスクは上がるそうです。
ワンちゃんの皮膚は、プロビタミンD3を人ほど多く持っていませんが、元々の供給源の腎臓と肝臓の力が歳をとって弱くなっているので、皮膚で合成されるビタミンDが大切になってきます。

ただし、ワンちゃんは暑さに弱いので、夏や暑くなりやすい環境では日光浴の時間を短くしてあげてください。



5.吠え続ける

夜鳴きと同じくらい飼い主さんを悩ませるのが、「吠え続ける」ことです。
「無駄吠え」といわれる行動は、若いワンちゃんでも見られる行動ですが、若いワンちゃんと同じ対応ではうまくいかないことがあります。

叱ったり、再度覚えさせようとしてもまず効果はありません。
叱られたこと、以前に覚えていたこと、しつけとして学習していたことを、忘れてしまってい可能性があるからです。

ワンちゃんはして欲しいことがあるのかもしれません
体力の衰えや鈍くなった感覚などの理由で、前はできていたこともできなくなっています。
そのいらだちや不満があって吠えていることもあります。
段差が乗り越えられない、水の場所がわからない、隙間に入って出られない、から吠えているのかもしれません。

そのような場合には、要求に応えてあげたり、問題を解決してあげれば吠えるのを止めてくれます。

寂しさや不安を和らげる
視力や聴覚などの感覚が鈍くなってくると、まわりの世界との繋がりを感じにくくなります。そうなると、寂しくなったり孤独を感じたりして、子犬が母犬を求めるような吠え方をしてしまうことがあります。

そのような時には、「そばにいるよ」「ひとりじゃないよ」と気づかせてあげましょう。
寄り添って、声をかけ、優しくなでてあげてください。

そして、飼い主さんの生活音や気配が感じられる近くにワンちゃんの場所を作ってあげてください。

6.理解力の低下

認知症になると、覚えていたことを忘れてしまったり、今までできていたことができなくなったりします。
自分の名前や飼い主さんの顔を忘れてしまったり、いつもの散歩コースで迷ったりすることが多くなってきます。



7.トイレの失敗

中でも問題になるのはトイレの失敗です。
今までトイレを失敗することなどなかったワンちゃんが、違うところで排泄してしまったり、トイレの場所がわからなくなったり、歩きながら排泄したりするようになります。

トイレの失敗には、認知症だけではなく肉体的な衰えも関係しています。

オシッコ
歳と共に膀胱の伸縮性も低下するので、あまりオシッコを溜められなくなります。
1回の量が少なくなったので何回もトイレに行かなくてはなりませんが、それが辛くなってくるとトイレに着く前にしてしまうことがあります。

うんち
肛門の括約筋の力も衰えてくるので、うんちが出るのを止められないときがあります。
また、トイレに行っても充分に「きばる」ことができないと、うんちを出し切ることができず、残ったうんちがトイレ以外で出てきてしまうことがあります。

室内トイレに慣らす
散歩が運動とトイレを兼ねているワンちゃんの場合、散歩の減少はトイレの機会の減少に直結します。
トイレをしたいけど、散歩まで我慢できないときや散歩に行くのが辛い場合など、トイレを失敗してしまいます。

基本は散歩中にトイレをすることにしていても、室内のトイレも使えるように慣らしておくことは大切です。
ワンちゃんも、トイレの失敗でプライドが傷つきます。

失敗させないことが、ワンちゃんのプライドを守りストレスを減らすことになります。
室内トイレをうまく使えたらすごく褒めてあげましょう。

室内トイレを増やす
1ヶ所ではじめた室内トイレも、失敗するようになったら増やしていきましょう。
うんちやオシッコをしたくなった時、近くにトイレがあれば失敗を防げます。
飼い主さんもイライラしないですみますし、ワンちゃんのプライドも守れます。

おむつ
あちこちでしてしまったり、うんちを踏んでしまうようになったらオムツの使用も検討しましょう。
お掃除やワンちゃんを洗う飼い主さんの手間や、たびたび洗われるワンちゃん側のストレスを考えるとオムツを使うのは悪いことではありません。

以前のワンちゃん用のオムツは生理対策用のものがメインでしたが、最近は介護目的のオムツも充実してきました。
ある程度の大きさのワンちゃんなら、人の赤ちゃん用のオムツを加工して利用することもできます。

オムツの場合、取り替えるまでうんちやオシッコが皮膚とふれ合っているので、皮膚がただれてくることもあります。まめにチェックして交換するようにしてください。
また、お尻まわりの毛を短くしておくとお手入れが楽になります。

トイレサイン
うんちやオシッコをしたくなると、そわそわしたりトイレの場所を探したり、特有の仕草を見せるワンちゃんは少なくありません。
また、食事の後や眠りから覚めた後にトイレをするワンちゃんもいます。
このようなトイレサインやトイレの規則性があれば、そのタイミングでトイレに連れて行きましょう。

オムツをしていたとしても、トイレで以前のようにうんちやオシッコができた方がワンちゃんも気持ちが良いと思います。

8.性格の変化

認知症には性格の変化がみられます。
性格の変化とは、我慢できなくなる、怒りっぽくなる、攻撃的になることです。
以前から攻撃的だったワンちゃんが、急に穏やかになるという変化はありません。

性格が変化してしまうのは、感情をコントロール出来なくなったり、意思の疎通が上手くいかなくなることが原因です。
相手の意図が理解出来なかったり自分の思いが伝えられないと、イライラが溜まって、怒りっぽい性格になってしまいます。

認知症で性格の変化が現れたとき、まわりの人は冷静に対応しなくてはいけません。
性格の変化に戸惑ったり驚くこととは思いますが、人の方がいらだったり怒ったりしてしまうと、ワンちゃんはさらに過激に反応してしまいます。
ワンちゃんが怒ったりイライラしていたら、関心を他の方向に向けたり、感情が落ち着くまで待つなど、心穏やかに対応しましょう。

いきなり触らない
機嫌の善し悪しにかかわらず、前触れなくワンちゃんに触らないようにしましょう。
突然触られて驚いたり、不調や痛みを抱えている場合には、反射的に咬んでくることがあります。

ワンちゃんにこれから近づくことを、音や振動、前に立つなどして知らせて、びっくりさせないようにしましょう。
準備や覚悟(大げさな言い方ですが)の時間をあげるとワンちゃんも驚かずにすみます。

子供や動物を近づけない
子どもや動物は、ワンちゃんに不用意に近づいたり触れてしまいます。
ワンちゃんに悪気がなくても咬んでしまえば怪我につながります。
特に家の外では、ワンちゃんのことを知らずに近寄ってくることがあるので、充分に気をつけましょう。
場合によっては訴訟問題になってしまうこともあります。

犬が噛みつくタイミングを知る
触れただけで咬んでくるようなワンちゃんもいますが、そこに法則やルールのようなものがあるワンちゃんも多いと思います。
頭をなでるのはOKだけど腰はNGとか、体をなでるのはOKだけど足はNGとか。
食器を出すときはOKだけど引き上げるのはNGとか。

ワンちゃんの攻撃スイッチに気づけたら、スイッチを入れないように注意したり、スイッチが入っても咬まれないアプローチの仕方もできるようになると思います。

また、スイッチはよくわからなくても、つきあいの長い飼い主さんならではの「勘」でかわせることもあるでしょう。

あつかい方を学習する
咬んでくることが解っていても、ワンちゃんに触れなければならないことがあります。
オムツを替える時やお薬を飲ませる時には、ワンちゃんが嫌がってもやりきらなければなりません。
そんな時にワンちゃんに咬まれずにアプローチする方法を見つけておきましょう。

大きめの毛布やタオルで優しくくるんだり、おやつで気をそらしてる間に抱いてしまうとか、エリザベスカラーを使うのも有りだと思います。
また、万が一に備えて、厚手の手袋や軍手などで飼い主さん自身の怪我を予防することも大切です。





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