なでられながら気持ち良さそうにしていた猫に、いきなり爪を立てられたり噛まれたりした経験は、猫好きなら何度もあることでしょう。
あまりにも理不冬な、この突然の態度の急変に、驚き、とまどい、時には腹が立つでしょう。
「猫は自分勝手だ、気まぐれだ」「何か不愉快なことをしただろうか?」「それが猫だ!」などと、いろいろ考えさせられます。
態度急変前にはサイン
突然に思えるこの行動にも、一定の流れがあることが、よく観察しているとわかってきます。
(1)あご、首筋、耳、お腹などを飼い主がなでています。
猫もくつろぎ、やさしく応え、嬉しそうにのどを鳴らしています。
(2)しばらくすると、飼い主が気づかないくらい、わずかに身を固くするようになります。
と同時に、耳が左右に回るように動き始めます。
瞳孔がちょっと大きくなることもあるでしょう。
(3)しっぽの動きが大きくなったり、硬くなってきます。
(4)それでもグルーミングを続けていると、急にひっかいたりガブリと噛んで、一瞬の後に走り去って行きます。
(3)の後、飼い主の手から抜け出して、飼い主を無視するかのようにお腹を出して、くつろいだポーズを示すこともあります。
これを、「お腹をなでて」という催促のポーズと誤解して、さらになでようとすると、後ろ足キックをお見舞いされたり、ガブリとやられます。
“爪を立てて噛みつき、脱兎の如く逃げ出す”行動は、猫が高度に脅威を感じた時に、身を守ろうとして起こす防衛行動と一致します。
身を守るために一撃を加え、報復を受ける前に脱出するわけです。
不意、しつこいは禁物
このような行動をとる理由は、大きく2つ考えられます。
1:あご、首筋、耳、お腹などは、猫にとって、なでられると嬉しいポイントであると同時に、急所でもあるということ。
ここは、適度な刺激は気持ち良いのですが、デリケートな場所なので、ちょっと強くなったり、位
置が少しずれただけで危険信号に変わってしまうのです。
気持ち良くリラックスしていたけれど、ふと自分が無防備な状態にあるのに気がついて、軽いパニック状態になってしまうことがあるようです。
2:過去のいやな経験が甦ってくるときで、典型的なのは、信じていた優しい人の手に裏切られたというものです。
やさしく気持ち艮くなでてくれていた手が、突然に前触れもなく捕まえる動きに変わることがあります。
爪や口からの攻撃を受けることなく、猫を捕まえようとするときに、人がよくやる方法です。
この後、爪切りや耳そうじ、投薬、点眼などをされれば、いやな記憶として残ることでしょう。
これが2度3度とくり返されれば、記憶はより強く長く残ることになります。
なでられること自体は気持ちが良いので、そのことを拒むことはありません。
初めのうちは、なでてもらいたい欲求が強いので、いやな記憶は封印されていますが、だんだん欲求が満たされてくると記憶が甦り始め、不安や恐怖感が増してきます。
我慢できない限界に達すると、ガブッとひと噛みして逃げ出すのです。
そこで、猫のなでられることに“ちょっといやになってきたかも”サインに早めに気づいて、しつこくしないで切り上げること、猫の信頼を損なうような、不意打ちやだまし討ちをしないこと、の2点に気をつければ、猫にガブッとやられることは、かなり避けられるでしょう。
人には理不早な振る舞いに見えても、そこには猫なりの理由があることを、きちんと理解してあげましょう。 |