犬の認知症は、夜鳴きや徘徊など、飼い主を困らせる行動を伴うので、よく知られるようになってきました。
しかし猫に関しては、「猫はボケない」という認識が今でも一般的です。
認知症になっても“困った行動”を引き起こすことが少ないし、寝ている時間が長くなった、と感じられるくらいでは、認知症の症状が出ているのかどうか、よくわからないからです。
長寿ゆえの病が増加
獣医学の進歩や、食事・予防などの飼育環境の改善などによって、猫の寿命はとても長くなってきました。
これに伴って、いろいろな加齢による疾患(成人病や腫瘍など)も増えて来ています。
その1つに 『認知障害症候群』、いわゆる認知症があります。
英国の研究機関は、11〜14歳の飼い猫の28%、15歳を超えると50%以上が、加齢による行動障害を、少なくとも1つは発症していると発表しています。
猫の神経系が傷つく過程は、人のアルツハイマー病とよく似ていることもわかってきました。
通常の生活に変化が
猫の認知症の症状は、犬とほぽ同じと考えられています。
主な症状は、次のようなものです。
・動きが鈍くなる
・寝てばかりいる
・突然大きな声で鳴く
・人や物によくぶつかる
・昼夜の逆転
・狭いところに入りこんで、出られなくなって鳴く
・名前を呼んでも反応しない
・無関心
・排泄の失敗
・食べ物の嗜好が変わった
・食べ物を異常に欲しがる
症状によっては、甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症、糖尿病などの代謝性疾患や、泌尿器系疾患などとの鑑別
診断が必要になります。
認知症の症状に当てはまっても、安易に認知症と判断しないで、必ず動物病院で診察を受けて下さい。
認知症は不治ではない
以前は、「年を取ったらある程度の痴呆症状が出るのは仕方が無い」という考えが一般
的でした。
しかし、人の場合も全てのお年寄りが認知症になるのではないように、猫の場合も全ての高齢猫で痴呆症状が見られるわけではありません。
このようなことから、認知症は、「年を取ると必ず、いつかやって来る、逃れられないもの」ではなく、「予防や治療も可能な病気」として捉えられるようになってきました。
早期対処で進行遅れる
『ミーコ』ちゃんの場合、上記の代謝性疾患などとの鑑別が必要です。認知症の可能性も十分に考えられます。
仮に認知症であったとしても、悲観することも落胆することもありません。
早い時期から対処すれば、症状の進行を遅らせることができるかもしれないからです。
猫と触れ合うのも重要 認知症を示す人の血液中の不飽和脂肪酸の濃度が低い、という報告から、DHA(ドコサヘキサエン酸) やEPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸を給与することは、やってみる価値があります。
また、人とのコミュニケーションの機会が少なく、脳に対する刺激が少ないと発症しやすいと言われているので、
・一緒に遊ぶ
・声をかける
・やさしく撫でる
など、コミュニケーションの時間を十分にとって、適度な刺激を与えてあげるようにしましょう。 |