母猫が子猫を守るために現す母性にはとても強いものがあります。
この母性は自分の産んだのではない子猫にも発揮されます。育児中の母猫なら、お腹をすかせた子猫をそばに置くだけで、難なく受け入れてもらえます。
メス猫の中でも育児中の母猫は、特に母性本能が強くなっていて、助けを求める子猫の鳴き声に抵抗できません。
母猫たちが保育園を
複数飼育の環境では、近い時期に重なって出産があると、その子猫たちは全ての母猫からほぼ平等に扱われます。
群れで生活しているメス猫たちは、子猫たちに対して社会的にとても寛容です。
時には保育園のような大きな子猫の集合体を作り、母猫たちを中心としたメス猫が代わる代わる面倒を見たり、子猫がミルクを欲しがれば分け隔てなく授乳をすることもあります。
このような状況は野生で見られることはありません。
野外で暮らす大人猫のテリトリーは広く、他の猫との密度の濃いつき合いはまず見られません。また、母猫Aの子猫が、母猫Bの子猫に出会うことも巣に近づくこともほとんどありません。
このように、自分の産んだ子猫以外の子猫と出会う可能性がほとんどないことが、自分の子猫と他の子猫を明確に区別するハードルを作らなかった理由ではないかと考えられています。
この子猫を拒絶しない寛容さが、出産していないメス猫(時にはオス猫でも)にも発揮されると、拾われてきた子猫の面倒をかいがいしく見るようになります。
仮とはいえ、このような親子関係が1度築かれると、それは本当の親子関係になっていきます。
サクラちゃんが2匹の子猫の世話をしたのも、母性と寛容さが発揮されたからでしょう。
猫密度が濃いと争いに
そのサクラちゃんが2匹の猫を威嚇するようになった理由として、
(1)子供を自立させるための“子別れ”という行動いさか
(2)同居猫としての辞い(子供が大きくなっているので)
の2つが考えられます。
(1)子猫が離乳の時期を迎えると、母猫は子猫が乳首に近づこうとすると避けるようになり、攻撃的になることもあります。
これは自立への第1段階で、母猫と遊ぶ機会は減り、兄弟同士で遊ぶことが多くなります。
猫たちの性格や環境に恵まれている場合には、母猫もこれ以上の威嚇はせずに、集人合体として安定した関係が成立していきます。
しかし、子山猫がオスや活発なメスの場合、母猫はその遊び方や関わり方を煩わしく不愉快に感じるようになり、子猫への威嚇もより攻撃性を増していきます。
野生で暮らす猫では、猫密度が高い場合や、食糧事情が悪い場合には、母猫の攻撃性はさらに強くなります。
そうなると、子猫は母猫の態度に嫌気がさし、母のテリトリーから出て行って新たな自分のテリトリーを獲得します。
こうして、子猫は一人前の大人猫として自立し、母猫は発情を迎え新たな子猫を身ごもるのです。
(2)母猫のほうがもう子猫としてではなく大人の同居猫として相手を見ているのに、子猫たちが相変わらず子猫の時のように関わっていけば、母猫は“もう、いいかげんにして”という気分になるでしょう。
室内飼育の場合、猫密度が諍いの刺激となることがままあるので、サクラちゃんの落ち着ける場所を確保してあげると改善するかもしれません。 |