猫は犬と共にペットの代表格ですから、ほとんどの人が、野生の猫は動物園で見るもので、家の近くにいる猫は野生の猫とは認識していません(ただ飼い主がいないだけ)。
しかし、飼い主のいない生活を数世代にわたって経た猫の中には、野生動物と同じような性格や気質になっている猫もいます。
猫が毎日のように食事を食べにやってくることと、人に好意を持っている、その人を信頼している、心を許していることとは決してイコールではありません。
人がとても苦手でも、人が出してくれる食事が唯一の食糧であれば、猫には選択の余地はないのです。
そのような野生気質の猫は、人や突然の音、見慣れない物や配置の変化、見知らぬ風景などに対して警戒心や恐怖を示します。
社会化期の過ごし方
相談の猫は、食事に来るようになって2年たっていますが、かなり警戒心を持っているようなので、そこの環境には慣れてきていても人には心を許していないのかもしれません。
過去の 『猫ごころ相談室』でも書いたことがありますが、社会化期(生後3〜7週)をどのように過ごしたかが、その猫の性格形成に大きく影響します。
この時期に、母猫や兄弟猫と一緒に過ごし、猫同士だけでなく犬などの他の動物や人、周囲の環境などから、いろいろな刺激を受け、さまざまなものに対する適応能力を身につけます。
代々飼い猫であっても、社会化期にいろいろな経験をすることなく、限られた人や環境で過ごしていると、極端に臆病になったり、人見知りが激しく、攻撃的になったりします。
外猫として育った母猫が人と接触のない社会化期を過ごせば、おそらく人に対して警戒心を持つています。
そしてその母猫から生まれた猫も人と接する機会を持たずに社会化期を過ごすでしょうから、人を許容しない警戒心を持った猫になっていきます。
このような猫は、大人になってからどれだけ人に優しくされても、なかなか人を受け入れてくれるようにはなりません。
人に慣れている外猫は、元飼い猫であったか、母猫が人に馴れていて社会化期に人とよい接触をしていたと考えられます。
ケージで生活させる
このまま食事を与え続けても、これ以上馴れてくれることは望めないので、人との接触の機会を強制的に増やす必要があります。
つまり、捕獲してケージで生活させ、人と過ごす時間を徐々に増やしていって警戒心や恐怖心を取り除いていきます(ケージは狭すぎてはいけませんが、広すぎるとトレーニングの効果が弱くなってしまいます)。
これは同時に、かつてのテリトリーをあきらめさせ、家の中を新たなテリトリーと認識させることにもなります。
猫との距離を縮めることを急ぐと失敗します。
神様に自分の忍耐力を試されていると思って、ゆっくりゆっくりやっていきましょう。
冬は外が寒いので、他の季節に比べて、家の中の快適さが際だちます。この時期がチャレンジには適しているかもしれません。
元は外猫という飼い猫はたくさんいるので、塚越さんも成功する可能性は十分にありますが、1つのチャレンジとして捉えた方がいいくらいの困難さと根気は必要でしょう。
そして、決して人に馴れない猫もいることを理解して、自分や猫を追い詰めずにある程度のところであきらめる勇気も必要です。 |