まず、縄張りについて説明します。
単独生活をする猫が好き勝手に行動していると、他の猫と突然出会ったり獲物の取り合いなどで、たびたび争うことになってしまいます。
それでは猫族の繁栄に支障をきたすので、それぞれの猫が“縄張り”や“テリトリー”と呼ばれる生活範囲を持って、その範囲内で生活し、それをお互いが尊重して、無益な争いを避けているのです。
くつろぎの場を中心に広がる生活範囲
テリトリーは大きく2つに分けられます。
(1)ホームテリトリー:自分の住んでいる家の中、広くても庭くらいまでの範囲。
このテリトリーは、基本的には他の猫と共有することのない単独の占有範囲で、他の猫に侵されることのないくつろぎの場所です。
複数飼育や野良猫ではもっと狭いこともあります。
(2)ハンティングテリトリー:ホームテリトリーを中心に外側に広がった範囲。
個体差や環境差はありますが、住宅街の場合は、ホームテリトリー周辺200〜500mの範囲が当てはまります。
1日に1〜数回パトロールして、尿や爪とぎなどでマーキングを行い、テリトリーの主張を行います。
ハンティングテリトリーは、1匹の猫が独占していることは少なく、かなりの部分を複数の猫と共有しています。
猫の社交揚と言われる集会場は、ハンティングテリトリーが重なり合った場所にあることが多いようです。
猫は単独生活者なので、大人猫の社会性のある行動は求愛交尾時に限られます。
子猫の場合は6〜12カ月を母猫と暮らしますが、その後それぞれに新たなテリトリーを求め、母猫のテリトリーから離れて行きます。
しかし、安全な住まいと十分な食事が保障されている環境(一般的な複数飼育など)では、集団を作って生活することができます。
この場合、母猫とその子猫から構成されることが多く、オス猫がメンバーに入ることはまれです。
子猫でもオスの場合は、成長すると、恵まれた環境を後にして単独生活者になって行くことが多いようです。
テリトリーを出て行くのはどんな時?
猫がテリトリーを出て行く時は、どんな時なのでしょう。
(1)発情期:いつもは自分のテリトリー内で活動している猫も、恋の季節になると大胆になり、テリトリーを越えて行動範囲を広げます。
恋の相手を求めて、他の猫のテリトリーにも踏み込むようになります。
行動範囲を広げた結果、新たな場所でテリトリーを確保できればそこに移り住んでしまうこともあります。
(2)突発的出来事:猫の方向感覚は優秀で、頭の中にはテリトリーのマップもちゃんとあるので、外出しても家に帰ってくることができます。
しかし、ケンカをして逃げたり、犬に追いかけられたりして、太い道を渡ってしまったり、いくつもの猫のテリトリーを越えて移動をしてしまった場合には、元の自分のテリトリーに戻って来られなくなることもあります。
この場合も新たにテリトリーを確保できさえすれば、そこで新生活を築いて行きます。
(3)過密な環境:恵まれた食住環境にいる猫がテリトリーを移動することがあります。
これは、ハンティングテリトリーが過密になった場合にみられ、食住環境は劣っても猫密度の少ない場所を求めたためだと言われています。
ご相談の野良猫さんも、この3つのいずれかの理由で来なくなったのではないでしょうか。 |