子猫が生まれて最初にすることは、おっぱいを探し出して初乳を飲むことです。
生まれ落ちたばかりの新生猫は、目もまだ開いていないし耳道もまだ十分に空いていませんが、頭をユラユラさせながら四肢を泳ぐように動かして、乳首を探し出します。
新生猫は、見えなくても聞こえなくても、鼻にある熱の受容器で乳首を探し出します。
私たちが暗闇の中、手探りでものを探すように、鼻先でやわらかいものを押しながら移動して乳首にたどり着きます。
乳首にたどり着くと、本能的に吸い付いて母乳を飲み始めます。
子猫が最初に飲む母乳を“初乳”と呼びますが、“初乳”は哺乳類にとってたいへん重要なものです。
“初乳”とは出産後28時間までの母乳のことで、普通
の母乳より複雑な組成を持ち、免疫物質と成長要素を含んでいます。
生まれたばかりの子猫は、免疫システムというものを持っていません。
乳腺は、妊娠すると免疫担当器官としての能力を持つようになり、免疫物質(液性免疫を相当する)を含んだ母乳を作っていきます。
“初乳”にはこの免疫物質の量
が極めて多く、通常の母乳の10〜20倍も含まれています。
また、リンパ球に代表される免疫細胞群(細胞性免疫を担当する)も“初乳”にたくさん含まれています。
新生猫は“初乳”を飲むことで、免疫システムの替わりになる物質や細胞を手に入れることになります。
これらが守ってくれている間に、自分自身の免疫システムを完成させていくのです。
<専用の乳首を決める>
“初乳”を飲んでいる頃はどこの乳首からでも飲んでいますが、生後2〜3日すると、それぞれの子猫が自分専用の乳首を決めていきます。
自分の乳首を見極める手段は主に匂いにあるようです。
しかし、その匂いは、それぞれの乳首の匂いなのか、吸い続けた自分の匂いなのかはわかっていません。
例えば、母錨のお腹を洗ってしまうと、子猫は自分の乳首にたどり着けなくなってしまって、混乱して乳首をめぐる争いが起こります。
乳首を専用化することは、子猫にも母猫にもメリットをもたらします。
子猫は、争ってケガをする危険が減り、無駄な体力や時間を浪費することもなくなります。
母錨は、授乳の時間を短縮することができ、余った時間を食事(狩り)や睡眠に使うことができます。
<お乳の出が成長に比例>
それぞれの専用乳首はどのようにして決められていくのでしょうか。
はっきりとはわかりませんが、見てきた経験と聞いた話を総合するとこんな感じです。
人気のある乳首はよく母乳の出る乳首なので、乳腺の発達がよくない1番上の乳首は選ばれにくいようです。
よく発達しているのは1番下の乳房ですが、1番人気でもないようです。
乳首の大きさも発達しているので、新生猫の口には大きすぎるのかもしれません。
1番の人気は下から2番目の乳房です。
母乳の出もいいし、乳首の大きさもちょうどいいようです。この乳首を手に入れた子猫は成長も1番いいように思います。
では人気のある乳首に皆が殺到するかというと、1番人気は狙わず、2番人気や3番人気に向かう世慣れた子猫もいるから不思議です。
実際の授乳は生後5〜6週まで続けられますが、乳首の専用意識は、生後2〜3週で弱くなってきます。
乳首の位
置にこだわらず、よく出る乳首から飲むようになります。
これは、離乳食への移行が始まる時期と一致しており、母乳への依存度が減ったことで、乳首をめぐって争うことがなくなるからでしょう。 |