普通、猫って魚が大好きですよね。 けれども、うちの2匹は焼き魚やお刺身をあげても知らんぷり。 キャットフードのみを美味しそうに食べます。 缶詰も時々口にしますが、進んで欲しがるのはドライフードだけ。 どんな味覚をしているのかしら?
いくら総合栄養食とはいえ、そんな状態で人生ではなく、猫生は楽しいのでしょうか?
猫の舌には、味覚を味わう器官としての役割と毛づくろいなどに使う“道具”としての役割があります。 舌表面の糸状乳頭と呼ばれるザラザラは、魚や動物の肉を骨から剥いだり、液体をすくったり、毛づくろいに都合の良いしくみになっています。 また、この突起はすべて内側に向いており、食べ物を飲み込みやすくしています。 猫はもともと肉食動物なので、新鮮な生肉からすべての栄養を手に入れていました。 獲物の血から塩分や鉄分を、筋肉からはタンパク質、内臓からビタミンやミネラルやアミノ酸、脂肪や炭水化物も得ることができます。 このようにシンプルな食生活のため、猫は味覚に、グルメ的感覚ではなく、鮮度感知や栄養感知の能力を求め、その能力を獲得しました。 <猫の舌の味蕾(みらい)は少ない> 猫は人間と同じように、酸味、苦味、塩辛さ、甘味の順で味を感知できると考えられています。 その中で、猫は特にすっぱさと苦味を敏感に感じ、塩辛さは中程度で、甘さは肉の甘味を感じる程度のものといわれています。 味を感じる感覚器を味蕾といいますが、これは有郭乳頭などのツブツブした舌乳頭の中にあり、前述のザラザラした糸状乳頭の間に存在しています。 それぞれの味蕾には担当する味が決まっていて、猫では、酸味や苦味担当の味蕾が多く、塩辛さや甘味担当の味蕾は多くありません。 猫の味蕾の数は、人の19分の1程度といわれています。 そのため、食事の鮮度と安全性に関係する酸味や苦味への感覚は鋭く、味わうための塩辛さや甘味の感覚には比較的鈍感です(脂肪とアミノ酸の味にはうるさい猫が多いようですが)。 ですから、我々の言うところの味覚は、それほど発達させる必要はなくなり、同じ食事でも飽きる様子を見せることなく食べてくれるのです。 しかし最近は人間の食べ物を口にする機会が多くなったせいか、塩辛さ、砂糖の甘さに敏感な猫も増えています。 <栄養重視、鮮度重視> 猫の味覚は、“発達しなかった”のではなく“必要以上に発達させなかった”のだという一面もあります。 最初に書いたように、猫の舌には、味わうという役目のほかに道具としての役割があります。 これは毛づくろいなど、グルーミングといわれる体の手入れです。 日常の手入れはもちろん、汚れた体や、お尻や足の裏まできれいになめて整えます。 母猫になれば、子猫のウンチやおしっこもなめとらなくてはなりません。 このようなときに、鋭すぎる味覚を持っていることはプラスにはなりません。 このような作業を、不快にならずに毎日やり遂げるためには、ほどほどの味覚がちょうどよかったのでしょう。 しかし、猫は決して味に鈍いわけでもないし、何でもいいと思っているわけでもありません。 むしろ、味覚が限定されている分、そこに関してはきわめて鋭いと言えるでしょう。 グルメ的な味へのこだわりはほとんどなくても、素材へのこだわりや食べ慣れたものへのこだわりは強いように感じます。 基本的には“栄養重視”、“鮮度重視”の傾向が強いようです。 今回のケースでは、こだわりのベクトルがドライフードに強く向いていて、揺るぎないようです。 このように、猫の健康や人の手間にとって便利な状態を、あえて変える必要はないと思います。 年齢が進んで、加齢性の問題が生じたときにも、この嗜好性はとても助かります。 このような猫は処方食に変えることが容易なので、疾患の進行を最少で維持でき、治療による改善も発揮されやすくなります。