帰巣本能とは動物が速く離れた場所から、自分の巣や家に帰ることができる能力のことです。
犬が“遠くの見知らぬ土地から自分の家まで帰ってきた”という種類の話は時々耳にします。
ところで、猫はどうなのでしょうか?
猫の帰巣本能の詰も、犬ほどではありませんが、時々は聞こえてきます。
猫や犬に帰巣本能があることは間違いありません。
猫のこの驚くべき帰巣本能は、単に嗅覚や方向感覚だけでは説明がつきません。
特別な能力を使っているのは確かなようです。
この能力は“自立航法”であると現在では考えられています。
これは、地図や磁石などの道具を使わずに、正しい方向や目的地に移動することができる自然のナビゲーション・システムのことです。
特別な能力として考えられているものは、
1.体内時計:同じ場所で生活していると、動物の体には体内時計という時間感覚が生まれる。
知らない場所にいても、その場所の太陽の位
置と体内時計で記憶している太陽の位置との違いを感知し、そのズレをなくすように移動して、自分の家の方向へ進むことができる。
2.磁気感知:コンパスのような機能を持つ器官が動物の体内にあり、方位
を認知することができる。
3.感覚地図:視覚・聴覚・嗅覚などの感覚器官より得られる情報から、頭の中に一種の地図を作り上げている。
4.方向細胞:方向細胞という脳細胞の働きにより、自分の目的地の方向を察知し、その方向へ移動する。
方向細胞は1990年にラットの脳内で発見されたもので、1つの細胞が1つの目標を記憶し、頭がその目標の方向に向いた時だけ活性化するという。
さらに方向細胞は、暗闇など視覚情報がない状況でも目標の方向に頭が向いた時に反応すると考えられる。
このように、自然ナビゲーション・システムは、1つではなく複数の方法によって構築されているようです。
しかし、全ての猫がこの能力を十分に使えるわけではありません。
人でも方向感覚に優れた人と道に迷いやすい人がいるように、猫にもこの能力には大きな個体差が存在します。
家に帰り着いた猫が賞賛される陰で、帰り着けずにいる猫が多数いることを忘れてはいけません。
飼い主は、猫の帰巣本能に過度に期待せず、猫を迷子にさせない、迷子になっても保護された後に連絡がくるように手を打たなくてはなりません。
迷子になってから後悔しても間に合いません。
<迷子に備える予防策>
1.完全室内飼育:外出しなければ迷子になることはまずありません。好奇心旺盛な猫には、脱走防止策も重要。
2.写真の準備:迷い猫の情報発信に、写
真があるのとないのとでは大違いです。
保護した方との確認作業にも、写
真は重要になってきます。
「私の猫である」ことの証明に必要になるでしょう。
日頃から猫の近影を撮っておくことをお勧めします。
3.首輪とネームプレート、マイクロチップ:首輪は目立つ色、ネームプレートには連絡先を書いておきましょう。
一番確実なのはマイクロチップ。
外れることはないし、日本中どこで保護されても個体確認ができます。
4.テリトリーと行動パターンの拇握:外出自由の猫の場合、テリトリーの範囲と、普段の猫の行動パターンをある程度知っておくことが大切です。
行動範囲やよく行く場所を知らないと、見当適いの場所を捜すことになりかねません。 |