10年前には阪神淡路に大地震がありました。また、ごく近い将来に大規模な地震が発生するとも予想されています。
そんな中で、新潟中越地震が起こってしまいました。
震災による被害は多角的な視点から様々なデータが出されていますが、ほとんどは物理的被害に関してです。
こうした物理的被害の他に、とても重要な被害が発生してきます。
それは震災を体験した心の被害なのです。
その代表ともいえるのが、PTSDです。
PTSDは心的外傷後ストレス障害の略で、最初に報告されたPTSD症例は、ベトナム戦争からの帰還兵だといわれでいます。
「死」を身近なものと感じる体験をしたことで、悪夢を見たり、フラッシュバック(再体験感覚)を起こしたり、覚醒感や無感情に陥ったりします。
大地震の体験そのもののほか、被災後の不自由な生活などの生活レベルの低下、悲惨な状況を目撃することなど、全てがストレス因子となり、様々なストレス反応やPTSDを引き起こします。
多くの人は自然に回復していきますが、時間がかかることもあります。
そして一部の人はPTSDを引き起こします。
新潟県中越地震被災地のペットにも、「余震におびえる」 「食欲がなくなる」など、PTSDに似たストレス症状が表れています。
猫では 「家に帰らない」「狭い場所から出てこない」、犬では「余震の度にほえる」「ヘリコプターにおびえて震えが止まらない」、などが報告されています。
食欲減退のほか、下痢やおう吐などの消化器症状、体を舐めまくったり脱毛などの皮膚症状も出ているようです。
約300人の犬の飼い主のうち、約8割の人が「地震後、犬がそばから離れようとしなくなった」と答えています。
今回の『リー』ちゃんの反応は、ストレス症状と考えられます。
再び大きな地震を体験したことで、改善に向かっていたストレス症状が表面に現れてきたのでしょう。
脇の下に入ることで眠ることができているのなら、そのようにさせてあげてください。
安心を感じられる生活を続けていけば、時とともに自然に改善していけると思います。
猫や犬に見られるストレス症状は、人の子供に見られるものと似ています。
自然災害が子供たちの心に与える影響には、次のような症状が挙げられます。
<幼児期>…以前よりも甘える・母親の側を離れない・赤ちゃんがえりをおこす。
<学童期>…無気力になる・イライラしやすい・乱暴な行動をとる・引きこもる、などです。
飼い主にも理解しやすいのは、この<幼児期>に似た症状が見られた場合ですが、<学童期>に似た反応もみられることも知っておかなくてはいけません。
<学童期>のサインを単なるワガママや不服従と見誤り、高圧的な態度や無関心な態度をとると、ストレス症状をPTSDに発展させてしまいます。
飼い主も震災のストレスを受けていますが、冷静な対応が早期の改善に繋がります。
猫や犬のストレス症状の改善に大切なのは、
(1)飼い主と一緒に暮らすこと、
(2)優しく接すること、です。
一時預かりなどでペットが飼い主から離れている場合、期間が長引けば、さらに精神面に影響が出る可能性もあります。
仮設住宅での同居を認めるなどの対策が必要でしょう。 |