猫が、ウールなどの毛織物やタオルなどその他の繊維をおしゃぶりする行動は、珍しくありません。
その行動がエスカレートすれば、食べてしまうようになることがあります。
中にはヒモ状繊維やゴム、スーパーのビニール袋などに興味を強く示す猫もでてきます。
飼い主が、この行動に危険なものを感じるのは当然なことです。
運が悪ければ、手術が必要になるほどの深刻な問題に発展することがあります。
繊維がほどけて飲み込まれて腸に詰まったり、ヒモ状のものがきんちゃく袋状に腸をまとめてしまうと、手術が必要になってしまいます。
私が経験した最悪のケースは、ストッキングの片足分を全部食べてしまったオス猫です。
ストッキングが腸全体に行き渡ってしまったうえ、ストッキングの編み目の間に腸の粘膜が入り込み、引っ張り出すことが不可能になっていました。
腸の多くの箇所で切開をしなければ取り出せず、大変時間のかかる大手術になってしまいました。
食事以外のものを口にして、食べてしまう問題行動を、異嗜といいます。
これらの行動を引き起こす原因は大きく5つ考えられます。
1.バランスの悪い食事
2.幼児期の強制離乳
3.退屈、刺激不足
4.消化器疾患、寄生虫など
5.常同痘
1と4は獣医師に相談して、原因から除外してください。
問題があれば改善してください。
今回のケースは、お話の様子から推測すると、2の幼児期の強制離乳が、問題行動の原因となっている可能性が高いように思います。
執着の程度があまりに激しい場合には、5の常同症の可能性もあります。
常同症とは同じ行動を絶え間なく異常な頻度で繰り返しとってしまう状態です。
これに当てはまる場合は、薬物治療が必要なケースが多いので、動物病院で診断を受けることが必要です。
幼児期の強制離乳ですが、猫のウールしゃぶりとも言われる行動です。
タオルや毛布をしゃぶったり足踏みする行動は、幼児性の名残といわれています。
乳を飲む行動は子猫にとって楽しいことですが、成長して成熟するに伴って消えていきます。
しかし、親から引き離すことで、強制的におしゃぶり行動をできなくさせると、おとなになっても続いてしまいます。
ふわふわした感触や、ラノリンという動物性の脂肪を多く含むウールは、無意識のうちに母猫のおなかを思い起こさせるので執着を示します。
対処法ですが、対象となる可能性のあるものを、猫の手の届くところから取りのぞくことを徹底しましょう。
家からそれらのものをなくすのは難しいかもしれませんが、そこから始めないと改善は望めません。
興味の対象物を置いておきながら、それを口にしないようにすることは無理です。
いずれはそのようにしていくことが目標ですが、始めは口にできなくすることが大切です。
また、生活の中で、遊びや刺激、楽しみを増やしましょう。
刺激が少なく退屈な状態が続くと、3のような理由などから、今回のような問題行動が現れることがあります。猫と過ごす時間を作って、たっぷり遊んであげましょう。
特に、猫がひとりで過ごす時間が多いのなら、ぜひすぐに始めて下さい。
適度な刺激は、心身ともに満足感を与えてくれます。
精神的に満たされていけば、問題行動も減ってくることが期待できます。 |