動物の性周期のうち、受胎できる時期を「発情期」といいます。「生理」や「さかり」と呼ばれることもあります。
犬や人は自然排卵なので、性周期=排卵周期で、犬では5〜6カ月に1度、人は平均28日に1度とある程度決まっています。
しかし、猫の場合は違います。
基本的には春と秋に発情する季節発情動物ですが、発情が始まつてからが違うのです。
猫は交尾刺激によって排卵する交尾誘起排卵動物なので、交尾する相手がいなければ排卵は起こらず、排卵があるまで発情期が繰り返されます。
交尾のない場合、この発情の繰り返しは、卵巣内の成熟した卵胞が退行するか、偽妊娠の状態になるまで続きます。
猫の場合、発情期以外にはオスと交尾をすることはありません。
発情期になると、甘ったれてすり寄ってきたり、甘えたような声でしきりに鳴くようになるので、その時だけ性格が変わったように思えるかもしれません。
しかし、普段どのような性格の猫でも、発情期には程度の差はありますが甘い声を上げ媚態を示すものなのです。
性格が変わったのではなく、発情期の特徴的な行動をとっているのです。
そして、この鳴く声や媚態は、完全室内飼いの猫の場合は飼い主に向けられますが、本来はオス猫に向けられたものです。
発情の間、メス猫は落ち着きがなくなり、食べる量
も睡眠時間も少なくなります。
室内飼育の猫は外へ出ようとすることもあります。そして、しきりに鳴くようになり、時には甘えた声で、時には悲しげな声で鳴くこともあります。
仰向けに転がったり、いつもより素直になってすり寄ってきたり、関心を引こうとしたりもします。
伏せた状態で尾のつけ根に軽く触れると、軽く腰を上げ尾をわきに寄せ陰部を見せ足踏みをする、ディスプレイ行動も見られます。
メス猫にとって、発情は大変ストレスがかかるもので、とても疲れる経験です。
活動的になり、消費エネルギーも増え、疲労も蓄積するのに、食事量
も睡眠時間も減少するからです。
発情中に体重が減ることも珍しくありません。
繰り返し発情がある場合、回復する時間が十分にとれないので消耗度も増します。
その結果、無気力になったり、短気な気性になったりするメス猫も珍しくありません。
このような理由からも、子供を産ませる予定がないのなら、避妊手術をすることが、メス猫の健康にとってメリットのあることが理解できると思います。
多くの飼い主が、「避妊手術をすると性格が変わってしまうのでは?」「活発性を失うのでは?」と心配して、避妊手術に躊躇しています。
活動量が減ったように見えるかもしれませんが、それは性に関係する行動が消えたからです。
ホルモンの影響を受ける行動は消えてしまうことがありますが、生まれ持った性格や知性は変化しません。
猫が優しくなくなったり陽気でなくなったり、遊ばなくなったりすることはありません。
避妊手術は、「発情期でない時期の猫の状態がずっと続いていくこと」と理解してもらえばいいでしょう。
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