ある程度以上の期間を猫と生活を共にした人は、猫が理由もなく(少なくとも人
にはそう見える)、突然家中を走り回ることがあるのを知っています。
ぶつかったら大怪我しそうな勢いで全速力でダッシュを繰り返したり、時には壁を駆け上ったりします。
また、何かに飛びかかったり、獲物に飛びかかって仕留めるような動作をすることもあります。
複数飼育の場合、それは大運動会に発展
することもしばしばです。
そして、その大騒ぎは何事もなかっ たように突然終わります。
所要時間は5分ぐらいでしょうか。
初めてこの行動を見た飼い主は、自分の猫に何事かの発作が起こったのか、何か病気にかかっているのではないか、と真剣に心配することでしょう。
病気や精神的な問題とは全く関係あ りませんから、心配する必要はありません。
病気ではないですが、人間にとってはうっとうしい迷惑な行動かもしれません。
しかし、猫と一緒に暮らしたい私たちは、この行動を我慢しなくてはなりません。
これは「狂気の時間」、「真空 行動」、「早朝騒ぎ」、「大運動会」
など、いろいろな言い方をされ る行動です。
完全室内飼育の猫 では大半がこの行動をします。
一方、1日の半分以上を外で過 ごす外出自由猫では、この行動 はあまり見られません。
なぜこのような行動を取るの でしょうか? 2つの可能性が
考えられます。
1.ハンティング・タイム
早朝や夕方に見られるのなら、このハンティングタイムです。
猫は夜間行動性の動物と思われ ていますが、正確には薄暮行動 性の動物です。
猫は野生の生活
をしていれば、この時間に狩りを行うのです。
ですから、猫が早朝や夕方に急に活動的になるのは自然なことで、猫の野生のリズムを日の当たりにしていることになります。
家猫として何十代も過ごしてきて、狩りをする必要などずっとなかったはずなのに、生存
のために身に付いた習性はなか なか消えないようです。
2.溜まったエネルギーの発散
薄暮の時間帯以外に起こる場合は、溜まったエネルギーの発散のための行動の可能性があります。
外と比べて刺激の少ない室内で、食べ物も十分に与えられ飢える心配もない生活を送っている猫は、やることがなく暇な状態に体をもてあますことがあるようです。
狩りの本能を発揮するチャンスや、危険を回避するスリルもありません。
猫が生まれながらに持っている数々の能力は、発揮する場を与えられることなく抑えられているのです。
この抑えられた状態があるレベ
ルまで達すると、ちょつとした 刺激で一気に発散されて、驚く ような行動となって現れるのです。
発散を誘発する「ひきがねとなる刺激」は、猫それぞれで決まっているようです。
猫はこの刺激を大暴れする口実にしているようです。
例えば、暴れたく
なると、飼い主のいやがることをして飼い主が怒るのを待ち、 それに過剰に反応して走り回ることがあります。
外で過ごす時間が多い猫は、 狩り遊びもできるしエネルギー
を溜め込むことがないので、この行動が少ないのも理解できると思います。
室内生活の猫は、どちらの理由であっても、この行動をすることで精神的な平衡を保っているといえます。
可能な限り、思う存分走り回らせてあ げてください。 |