飼い主の多くは、自分のペットが変な場所で水を飲むのを目撃すると、少なからずショックを受けるようです。
自分の可愛い猫が、ちょっと品が無く見えてしまうからかもしれません。
猫は変なところ(人の基準で)の水を飲むのが好きです。
水道の蛇口からポタポタ垂れる水滴を飲むのは、よく見かける姿ですが、そのほか、流しのたまり水、浴槽の残り湯、風呂場の床のたまり水、水槽の水、プランターの受け皿の水、雨水や水たまりの水、池の水など、私たちが「汚い水」と感じている水をよく口にしています。
このような水は、「非衛生的である」という理由で、「飲ませないようにしなさい」と言われます。
猫の飼育書には、「飲み水は毎日替えて衛生的に保ちましょう」と書かれています。
私も尋ねられればそう答えるでしょう。
ただ、野生の猫や飼い主のいない猫は、池や水たまりの水を飲んでいますが、病気にならずに暮らしています。
実のところ、私たちが言うところの「衛生的ではない水」を飲んでも、体調を崩す危険性はかなり低いと考えられます。
強力な消毒薬や洗剤を使って風呂場や台所を洗ったあとや、プランターに肥料を与えたり薬品を使ったあとなどには注意が必要です。
けれどそうでなければ、猫の健康に影響を及ぼす恐れはまず無いと思います。
猫たちは、きれいな水をいつでも用意してあるというのに、それを無視して、どうして変なところで水を飲むのでしょう?理由はいくつか考えられます。
(1)水道水の塩素臭を猫が嫌う。
私たちでも「まずい」と感じる水道水もあるくらいですから、臭いに敏感な彼らには耐え難いのでしょう。
(2)食器についた中性洗剤の臭いが嫌い。
食事にはしっかりした臭いがあるので、中性洗剤の臭いを我慢できても、水の場合にはそうはいかないのでしょう。
(3)水の味には温度が重要な要素。
猫によって好みの温度は違います。
蛇口から直接飲む猫の場合、冷たい水がお気に入りです。
時間がたって温まった水は飲まないのに、入れてすぐの水なら口を付ける猫もいます。
冷たい水が嫌いな猫は、入れたての水や蛇口の水は飲みません。
蛇口の水の場合、あの「ポタッ」と雫が垂れる音も少なからず関係しているようです。
(4)有機物の入った水が好き。
汲み置いたり沸かした水は、臭いもない代わりに味も素っ気もない物になってしまいます。
それに対して、流しの水や風呂場の水には有機物が混ざっていて、それが猫の好みに合うことがあるようです。
「味のある水」ということかもしれません。
私たちにそれぞれの水の好みがあるように、猫にもそれぞれの好みがあります。
猫も、「水を選べる状況になれば、より自分の好みにあった水を求める」ということでしょう。
対処法は2つ。
1 猫の好みを尊重し、好きなところで飲めるようにする。飼い主は危険な水にならないように注意する。
2 なんとしても用意した水を飲んでもらう。
大きなバケツにしたり、ミネラルウォーターにしたり、浄水器を使ったり、ミルクをほんのちょっと混ぜたり、それでうまくいくケースもあります。
猫が気に入ってくれるまで、試行錯誤です。
それでもうまくいくとは限りません。 |