大人の猫の場合、新しい飼い主にすぐに心を許すことはそれほど多くありません。
見知らぬ人には、強い警戒心で接する猫はたくさんいます。
病院に来る猫の中には、攻撃モードになる猫や、怖がるあまり失禁脱糞する猫までいます。
この猫たちは、決して虐待を受けたり、人間不信に陥るような経験をしてきたわけではありません。
知らない場所、知らない人、知らない臭いや音に緊張しているのです。
このような態度は自然な反応です。新しい飼い主の元に来た猫にも、同じようなことが起こつていると考えられます。
猫が新しい環境に慣れるためには、そこが安全で落ち着ける場所だと理解してもらい、「この人は信頼できる」、「この人は安心して心を許せる」と猫に思ってもらわなくてはなりません。
そのためには時間と距離が必要です。
私たちも、新しい環境に入ったとき、すぐにうち解けてなじめるわけではないと思います。
世話を焼かれすぎるより、適度な距離と時間を与えられた方が、早くなじめるのではないでしょうか。
今回のように、猫の警戒心が強い場合、無理に距離を詰めるのは逆効果です。
行き止まりに追いつめられたのと同じ心理状態に陥ってしまいます。
追いつめられた猫は、まず威嚇をしてきますが、それでも近づいてくれば攻撃を仕掛けてきます。
食事を入れるときに噛んでくる行動は、このような心理状態がさせているでしょう。
緊張状態にあれば、大きな音に特に強い恐怖感を持っていなくても、過敏に反応することはあると思います。
この怖い経験が飼い主と結びつくと、猫と飼い主のいい関係を構築する上で大きな障害になってしまいます。
猫の緊張を解き、リラックスさせましょう。
それで新しい事に対応する力も生まれてきます。
持続的な緊張は強いストレスをもたらし、環境適応能力を奪ってしまいます。
猫がひとりですごせる空間を用意しましょう。
猫が人から距離をとれるように、できるだけ大きいケージを用意するか、ケージから解放してあげてください。
猫の方から人や部屋のことに興味を示してくるまで、極力干渉しないようにします。
余裕ができると、怖い場所ではないこと、人も恐ろしい存在ではないことを理解できるようになってきます。
威嚇しなくなり、人の動きに興味を示すようになり、甘えた声で鳴くようになればかなりの進歩です。
ただ、いいペースで進んでいると、油断が原因か自信からか、一気に事を進めようとチャレンジしてしまう場合があります。
成功すればいいですが、時期尚早の場合にはスタートラインどころかもっと後まで戻ってしまうことにもなりかねません。
ここまで進んだからもっと仲良くしたい、という気持ちは本当によくわかりますが、ここが一番肝心です。
根気があるかどうか我慢強いかどうか、神様にテストされていると思ってぐっとこらえて、猫の距離感に従いましょう。
こつは、急がない、焦らない、あきらめない、です。
根気よく愛情を持って接していけば、心は通じるようになります。
鎮静フェロモン類化合物や抗不安楽を併用する方法もあります。
うまく使うととても効果があります。
動物病院で相談してください。 |