ペットとして猫を選んだ理由に、“犬のように鳴かないから”というポイントをあげる人が少なくありません。
犬は群れで生活する動物なので、群れのメンバーと常にコミュニケーションを取る必要があります。
対して、猫族は一部を除いて単独生活者なので、他の猫とコミュニケーションを頻繁に取る機会はありません。
ですから、例外はありますが、犬は声によるコミュニケーションが発達しているのでよく鳴き、猫は必要な時以外にはあまり鳴かないのです。
相談文ではほとんど鳴かない猫を心配していますが、無口な猫はそれほど珍しくありません。
何年も診ているのに、一度も鳴き声を聞いたことがない猫もいます。
注射の時に「ニャ」と鳴いて、飼い主が、「半年ぶりに声を聞いた」と驚くこともあります。
鳴かないことで困ったケースとしては、「押し入れに閉じこめられたのに、鳴かないのでなかなか見つけもらえなかった」という話くらいしか聞いたことがありません。
逆に、猫の激しい鳴き声に悩んでいる飼い主はたいへんです。
猫にも飼い主にもストレスが加わって、深刻な問題となり、問題行動治療が必要になるケースもあります。
我が家の猫『悟空』も、社交的ですぐのどを鳴らすかわいい猫ですが、口数は多くありません。
『ミャウリンガル』というアイテムがありますが、悟空のような口数の少ない猫にはあまり意味がありません。
人でも、口数は少なくても、元気で明るく社交的な人はたくさんいると思います。
“生活に満ち足りている猫は鳴かない”という説もありますから、精神的肉体的問題は心配しなくても良いと思います。
健康診断を受けるのは良いことですが、治療は必要ないでしょう。
口数の多さが元気や健康のバロメーターではありませんよね。
人は言葉で感情や考えを伝える動物なので、口数の少なさがコミュニケーション不足になることもあるでしょう。
しかし猫の場合、声以外にコミュニケーションの手段を持っています。
その1つは顔の表情です。
“猫の顔は感情に乏しく、気持ちを読み取りづらい”と表現されることがありますが、猫の飼い主ならこのことが間違いで、猫の表情が豊かなことを知ってると思います。
目の大きさ、耳の動き、口の開き方、ヒゲの立ち方や動き方など、様々な表情を見せてくれます。
また、猫はその柔らかな体でも精神状態を表現します。
体勢や姿勢、腰の高さ、しっぽの動き、毛のふくらみなど、姿だけでもいろいろな心の動きが読み取れるでしょう。
さらに、動作や仕草でも気持ちを伝えてくれます。
おなかを見せて寝ころんだり、すりすりしたり、もみもみしてくれたり、膝の上に乗ってきたり、時にはマウンティングしたり、いろいろなメッセージを伝えてきます。
猫とのコミュニケーションは、鳴き声だけではありません。
顔の表情やボディランゲージを読み取って、翻訳することは決して難しいことではありません。
猫と生活をともにしていれば、飼い主には自然と身に付く能力です。
翻訳できるようになれば、猫が鳴いてくれなくても、ちゃんとコミュニケーションは成立します。
口数が少ないのも個性と考えて、付き合っていってください。 |