猫も人の事情に伴い、移動する機会が増えています。
動物病院に行く短い移動から旅行などまで、時間や移動手段も様々です。
移動時間が長い場合や初めての場合には、猫の体や心に加わるストレスが心配になります。
移動する以上ストレスからは逃れられませんから、私たちは、猫のストレスが軽くなるように、ストレスから早く回復できるように工夫しなくてはなりません。
猫が移動する手段として、自家用車は最も一般的といえるでしょう。
今回の相談は車での移動なので、そこに絞ってお話します。
車の移動を苦にしない猫も少なくありません。
私の悟空は最初から平気でくつろいでいました。
そのような猫がいる一方で、苦手な猫もたくさんいます。
車で移動することへの不安と恐怖、車の動きにうまく対応できないことが原因です。
車で移動することへの不安と恐怖は、本能的なものです。
車で移動した経験が少ないと、未知なことへの不安が恐怖へと発展することがあります。
また、車に乗っているときや出かけた先で、いやな経験や怖い経験をすると、車とその記憶が結びついて車に乗ることだけで不安や恐怖を抱くようになります。
不安や恐怖心から生ずる問題行動としては、興奮、攻撃性、刺激過敏反応、荒い呼吸、大きな鳴き声、逃走を試みる、嘔吐、失禁、脱糞、などがあります。
自虐行為(自分の手足や尾を唆む)や過剰なグルーミングで自分自身を傷つけることもあります。
車を怖がらないようにするために、車に乗ることは楽しいことで、行き着いた先にも楽しいことが待っていると教えます。
車に乗ったときにいやな経験や怖い経験をさせないことも大切です。
初めは止まった車に乗せて優しく声をかけてあげましょう。
落ち着いた行動がとれるようになったら、ブラッシングや食事を少し与えてみます。
車の中で落ち着けるようになったら、実際に車で移動してみます。
必ずキャリーに入れ、短い時間からはじめ、だんだんと長くしていきます。
猫がいやにならないうちに移動は終わらせましょう。
もう1つ、移動する前2時間は食事を与えないでください。
移動中に吐いてしまえば、それだけで車が嫌いになってしまうかもしれません。
移動が長時間の場合、1〜2時間ごとに休憩を入れてあげましょう。
猫が車での移動を楽しめるようになれば、猫の問題行動は出ないでしょう。
車の動きに対応して、バランスをうまく取れない猫(人の乗り物酔いと一緒)は、車に酔ってしまいます。
バランスの機能が未発達な子猫や機能の衰えてきた老猫は、酔いやすいといえます。
大人猫であれば、移動時間を徐々に増やすことで慣れさせることが期待できます。
相談者の猫の場合、臆病で外出経験も少ないようなので、少しずつでも外出と車のトレーニングをすると、本番のストレスを軽くすることにつながると思います。
トレーニングの経過や猫の様子などから、酔い止めの薬や軽い鎮静剤などを使った方がよい場合もあります。
薬については動物病院で相談してください。
できれば、本番前に薬がどのくらい効果があるのかテストをするとよいでしょう。 |