飼い主がいる外出自由猫ではなく、完全な自由猫の場合、警戒心を持っていることはごく自然なことです。
子猫の社会化期(3〜5カ月齢まで)に、人との接触なしに暮らしていた場合、人への警戒心が簡単には解けていかないことが多いようです。
今回のケースでは、子猫はこの社会化期に間に合ったことで、すぐに人を受け入れて、警戒心を解いてくれたのでしょう。
母猫の場合、子猫時代に人との接触がなかった可能性もあり、加えて保護されるまでの間に、人に恐怖心を抱くような出来事があった可能性もあります。
一度芽生えた不信感や警戒心を、一発で解消する画期的な方法は、残念ながらありません。
時間をかけて焦らずに取り組むことです。
もっとも、自由猫を保護した場合、食事やトイレも一切しないケースもありますから、今回はそれほど悪いスタートともいえないと思います。
まず大切なことは、母猫を探し回らないことです。
彼女は、自分が安心できる場所から、必ず家の中の様子をうかがっています。
探し回ると緊張感を抱いて、さらに奥まったところに潜むようになってしまうのです。
次に、食事の場とトイレを、安心して利用できる場所に移動します。
今の場所がそれに該当するなら、そのままにしておきます。
母猫には名前があると思いますが、子猫と遊ぶときや、家族との会話で、彼女の名前を頻繁に口に出しましょう。
興味を持って、様子を見に近寄ってくるようになるでしょう。
姿を見かけるようになっても、ことさら騒がないで下さい。
まずは、人前に姿を見せることに慣れさせましょう。
決して近づいたり、目を見つめたりしないで下さい。
そして、それが普通のことであるかのように自然にふるまって下さい。
姿を見せることが多くなったら、彼女が姿を見せてから食事を用意するようにします。
そして、食事を用意しているのは人であることを印象づけます。
人がいても食事をするようになったら、食事場所を人がいる場所に少しずつ近づけます。
人の近くでも食べるようになったら、初めにお皿の中に2〜3口分だけを入れ、それを食べ終わったら、猫の前でまた2〜3口分を追加するようにします。
そのときには、ゆっくりと、目を合わさないこと。
ここまできたら、今度は手から直接食べさせましよう。
手からでは食べてくれないようなら、スプーンや小皿を手に乗せてあげてみて下さい。
ここまで順調にきても、なでたり抱いたりは慎重に。猫のほうから近づくまで我慢して下さい。
向こうからすりよってくるようになれば、成功です。
1カ月以上たっても姿を見せないようなら、半強制的に人に馴らす必要があるかもしれません。
人と接触せずに生活させていては、いつまでも人に馴れることはできないので、まず猫を捕まえます。
大き目のケージを用意し、その中にトイレや食器を入れます。
最初は隠れられるように段ボールを入れてあげるとよいかもしれません。
ケージは、静かで人の動きが見えるところに置きます。
そして、優しく声をかけながら毎日の世話をします。
馴れてきてからの過程は同じです。
元自由猫でも、愛情を持って焦らず世話をしていけば、必ず馴れてくれます。
あきらめずにがんばって下さい。
思いあたることがあればすぐ改善します。
また、生活の中で、遊びや刺激、楽しみを増やしましょう。
刺激が少なく退屈な状態が続くと、(2)のような理由などから、今回のような問題行動が現れることがあります。猫と過ごす時間を作って、たっぶり遊んであげましょう。
特に、猫が1人で過ごす時間が多いのなら、ぜひ始めて下さい。
運動と適度な刺激は、心身ともに満足感を与えてくれます。
精神的に満たされていけば、問題行動も減ってくることが期待できます。
|