飼い主と離れることをいやがり、離れるとその不安からいろいろな問題行動をとる猫や犬がいます。
これを分離不安症といいます。
犬でみられることが多く、専門の治療薬も発売されています。
猫でも犬ほど多くはありませんが、分離不安症は起こってきます。
今回のケースもこれに当てはまると考えられます。
相談者はスプレー行動の改善だけでも、と望んでいますが、一部の行動のみの改善は難しいと思います。
分離不安症全体への対応が必要です。
猫でみられる問題行動は、鳴き続ける、不適切な場所での排便排尿、棚の上のものを落としたりものを壊す、などです。
また、問題行動とは別に、食欲不振、下痢、嘔吐、なめこわし、などの症状が出ることもあります。
このような猫は、飼い主に対して、まだ母乳を飲んでいる時期の子猫のような過剰な愛情を持っています。
幼猫が母猫の後追いをするように飼い主の後を始終ついて回り、トイレやお風呂にまでついてきて中に入りたがったり、ドアの外でじっと待っていたりします。
少しでも姿が見えなければ大声で飼い主を呼び、無視されたり姿の見えない状況が続けば、飼い主が在宅していても問題行動が現われることもあります。
飼い主はこれらの問題行動を、留守番をさせたり無視をした腹いせやしつけの悪さだと考えがちですが、腹いせでもしつけの問題でもありません。
不安やストレスから引き起こされる行動であり、猫が意識的に行っているのではなく、猫自身もこれらの行動をコントロールできなくなっているのです。
飼い猫は飼い主の保護の元で、食べもの、生活の場所、安全などを与えられているため、自立しにくい環境にあるといえます。
少しの甘えは残っていたほうが飼い主も猫も楽しく暮らせると思いますが、ある程度は自立してもらわないと、分離不安症のような問題が起こってきます。
飼い主は、母猫が子別れの時にするように、距離をおいて子猫と接し、突き放すようにして自立を促す必要があります。
猫が飼い主と一緒にいなくても不安を感じなくするためには、猫の精神的な自立が必要です。
猫から甘えてきても無視します。猫と触れあう場合には必ず飼い主からアプローチしましょう。
なでたり抱いたりするのも、猫が求めた時ではなく、飼い主の指示に従った時のご褒美として行います。
飼い主が家にいても、別の部屋で過ごす機会を作ります。
トレーニング中にスプレーをされても、決して騒がず無視してください。
騒いだりなだめたりすると、飼い主のその行動を導きたくてスプレー行動が助長されてしまいます。
生活の中の運動量、刺激、楽しみを増やしましょう。
他の2匹を交えて一緒に遊んだり、運動する機会を作りましょう。
2匹との関係が濃くなれば、その分飼い主への依存度が減ることになります。
また、十分な運動は体と精神へのいい刺激になります。
適度な疲労をもたらしますし、ストレスやフラストレーションを解消する効果
が期待できます。
改善が弱ければ、犬に使われているような抗不安薬を補助的に使うことも考えてみましょう。 |