子供を産ませないため、マーキングを予防するため、ケンカを減らすため、放浪癖を改善するため、など、いろいろな目的で去勢手術は行われます。
たいていの場合、去勢手術は飼い主を満足させる絡果
をもたらしてくれます。
しかし、すべての性的行動を去勢によってなくすというわけにはいかず、去勢されたオス猫でも程度の差はあっても様々な性的行動を残すものです。
特に、1歳を過ぎてから去勢手術が行われた場合や、複数で飼育している場合に残りやすいようです。
複数飼育のこれは、性的な遊びと考えられています。
性行動が残る別の理由として、“潜伏睾丸”があります。
精巣は卵巣と同じ場所から発生し、成長とともに腹腔内をお尻の方に移動して鼠頚部から皮下に出て、陰嚢内に収まります。
この過程のどこかで精巣の移動が止まってしまった状態を“潜伏睾丸”といいます。
陰嚢内の睾丸だけを摘出して潜伏睾丸を残した場合、本当の意味での去勢手術が完了していないので、オスとしての様々な性行動が残ります。
潜伏睾丸はガン化する確率が高いので、性行動に問題はなくても摘出が勧められます。
さらに、猫の性的行動のすべてが性ホルモンに支配されているわけではありません。
遊びや他の目的でしている行動が性行動のように見える“疑似性行動”もあります。
今回の相談のケースは、去勢猫がメス犬との交尾を求めてのマウンティングではなく、メス犬への愛情と執着を示す行動のように考えられます。
性的要因がまったくないとはいえませんが、性的衝動がこの行動の主体ではないと思います。
猫がお気に入りの相手(主に飼い主の手や足)や物(枕やクッション)にマウンティングしたりかんだりすることは珍しくありません。
マウンティングは交尾だけではなく、群れの中で社会性を保っていくためのスキンシップやコミュニケーション行動の1つでもあります。
群れの中で優位さを示すためにマウンティングをする場合もあります。
今回のケースではメス犬がおとなしいので、それが服従的態度として去勢猫に受け止められ、マウンティング行動を誘発したとも考えられます。
去勢猫のこの行動は放置しても去勢猫には特に問題はないと思いますが、メス犬がストレスを感じているようなので改善してあげた方がいいでしょう。
愛情表現の対象として、社会性の確認としての行動ですから、他に愛情表現の方法があること、他にコミュニケーションの取り方があることを教えてあげることが大切です。
マウンティングがあまりにも多いようなら、冷却期間として一時期2匹を隔離することも必要かもしれません。
優しく声をかけてなでてあげたり、ブラッシングしてあげたり、リラックスできるようにしましょう。ラベンダーなどアロマを使うのもいい方法です。
こちらから(人から)遊びを誘いかけましょう。
特に、メス犬にマウンティングしそうな時やしている時には、優しくたしなめて遊びに誘います。
十分に体を動かして遊ぶことはとても大切なコミュニケーションです。
マウンティング以外のコミュニケーションの方法をいろいろ学習させれば自然とマウンティングは減ってくると思います。 |