野良猫は、ゴハンをあげる人が来ると集まってきますが、その他の人には反応を示しません。猫は相手をどのようにして識別しているのか、ご存じでしょうか?
猫の感覚は嗅覚が優先
何かを識別する時に使われるのは五感と言われる、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚です。人の場合、相手を識別するときに使う感覚は、主に視覚で、次いで聴覚です。
嗅覚や触覚を使うことはまずありません。猫の場合、主に使う感覚は嗅覚です。
次いで聴覚、視覚の順、触覚は念押しの確認時に使います。
●嗅覚 猫は鼻だけでなく、口でも臭いを感じとることができます。
猫の嗅細胞の数は人の2倍、嗅ぎ分ける能力は数万〜数十万倍と言われ、多くの判断を嗅覚により行っています。
また、猫の鼻は温度計の役割もしています。
鼻で吸い込んだ空気の温度を測ることで、0.5度の違いも識別できるそうです。他にも、2つの鼻の穴に届く臭いのわずかな時間差から距離を割り出すこともできます。また、マーキングした臭いを嗅ぐことで、安心感を得ます。
●聴覚 猫の聴覚は人より鋭く、高音域をより広範囲で聞き取ることができます。
そして、音源までの距離や方向を知る能力にも優れています。
このため、暗闇の中でも正確に獲物を捕らえることができるのです。
●視覚 猫の視力は人ほど良くありません。
色も育と緑は識別できますが赤はできません。
その代わり、暗いところでの視力と動いているものを見極める能力には優れています。
猫が主に活動する夜の暗闇や月明かりの下では、色を感じる機能はあまり必要なかったのでしょう。
猫社会の中で臭いが果たす役割は、とても大きなものです。
ホームテリトリー(自分だけの縄張り) の主張や、ハンティングテリトリー(ホームテリトリーより一回り大きい)を共有する猫の確認は、臭いによるマーキングによって行います。
猫は、臭い以外の感覚によって相手を認識できたとしても、覚えている臭いがしなかったり、他の臭いをまとっていると、不安や恐れを感じて攻撃的になることがあります。
シャンプーをすると同居猫に威嚇されることもあるぐらいです。
ゆっくりとなじませる
レオン君の場合もこれに当てはまるような気がします。
入院によって、ナナちゃんの身体に付いた消毒薬や薬、他の動物などの臭いが、ナナちゃんの様子を一変させたように感じたのでしょう。
人や犬の場合は、いつもと臭いが違うことで戸惑っても、視覚や聴覚によって相手を見極め、受け入れることができます。
猫は視覚や聴覚によって“よく知っている相手らしい”ことに徐々に気付くのですが、臭いによって認知するべく感覚が支配されているので、合理的に識別する以前に、本能的に拒絶してしまうようです。
レオン君が、帰ってきたナナちゃんを、“よく知っているナナちゃんとは違う”と認識してしまったのなら、今回のレオン君の態度も理解できます。
そこで、初めてナナちゃんを迎え入れたときと同じようなつもりで接しましょう。
今回のようなケースでは、ある時突然、以前のように仲良しになったりします。
その日が来るまで、再び時間をかけ、ゆっくりとなじませていくことが大切です。 |