ペットの基礎知識 特別篇
【重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について】

マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ですが、4月10日に国内での死亡確認7人目と発表されました。

 SFTSについて、心配する問い合わせも増えてきています。

 先日、動物薬を多数発売している共立製薬より、SFTSについてのQ&Aが配布されました。

 皆さんの知りたいことが良くまとまっているので、簡単にアップしたいと思います。


『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは
どんな病気ですか?』

マダニが媒介するウイルス感染症で、原因となるウイルスは最近発見されました。

ヒトで発症すると、発熱・嘔吐・下痢などの症状が見られます。

血液検査では、血小板減少、白血球減少、肝酵素値の上昇などが見られます。


『原因となるウイルスは?』

ブニヤウイルス科フレボウイルス属SFTSウイルスです。

酸や熱に弱く、消毒用アルコールなどの一般的な消毒剤で消毒が可能です。


『ウイルスの感染経路は?』

マダニが媒介する感染症で、中国ではフタトゲチマダニが主な媒介者であるとされています。

しかし、オウシマダニからもウイルスが検出されているので、他のマダニも媒介者になる可能性があります。

蚊による媒介については否定されています。


『SFTSの症状は?』

ヒト:発熱、消化器症状(食欲低下、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、 神経症状(意識障害、れいけん、昏睡)、リンパ節腫脹、咳、のどの痛み、出血症状(紫斑、下血)など

致死率は高く、およそ12%とされています。


『SFTSの潜伏期間はどれくらい?』

マダニに咬まれてから6〜14日程度と考えられています。


『SFTSの発生地域はどこですか?』

国内においては、広島、山口、愛媛、長崎、宮崎、佐賀、高知でSFTS症例が確認されていますが、SFTSウイルスを媒介するマダニは全国に分布していることから、これら以外の地域でも発生している可能性があります。


『ヒトのSFTSウイルス感染率はどのくらいですか?』

中国の流行地における調査では、健常者の0.8〜3.8%から抗ウイルス抗体が検出されています。

日本国内では、抗体調査が行われていないので感染率は不明です。


『SFTSの発生しやすい季節は?』

中国におけるSFTSの発生はマダニの発生する時期に一致し、3〜11月に発生しています。

発生のピークは5〜7月です。


『ヒト以外の動物にも感染しますか?』

中国における血清疫学調査では、山羊、牛、羊、豚、鶏、犬から、抗SFTSウイルス抗体が高率に検出されています。

また、牛、山羊、犬、猫に寄生するマダニからもSFTSウイルス遺伝子が検出されています。

これらの動物が感染源となるかどうかの特定はされていません。

日本国内では、抗体・遺伝子調査の報告はなく、感染状況は不明です。


『犬におけるSFTSウイルス感染率はどれくらいですか?』

SFTS流行地である中国江蘇省での調査では、6.4%犬が抗SFTSウイルス抗体陽性でした。(N=125)  一方、湖北省での調査では、55.0%の陽性率でした。(N=11)

中国の農村部でのマダニの発生率は著しく高く、犬や家畜に数百のマダニが寄生していることも珍しくありません。

この高いマダニ寄生率が高い抗体保有率に関連していると考えられます。

日本国内では、調査の報告はなく、感染率は不明です。


『ヒト以外の動物でもSFTSは発症しますか?』

日本国内でも、海外においても、動物のSFTSウイルス感染による発症の報告はありません。

現時点では、ヒトのみの感染症であると考えられています。


『SFTSの予防法はありますか?』

マダニがSFTSウイルスを媒介することから、マダニに咬まれないこと、マダニの寄生を予防することが重要です。

草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出を少なくすることが大事です。

また、犬や猫にマダニの駆除剤を使用しておくことで、SFTSウイルスの感染リスクを低減できるとかんがえられます。

これは、重症熱性血小板減少症候群だけではなく、国内で毎年多くの報告例がある、つつが虫病や日本紅斑熱など、ダニが媒介する他の疾患の予防のためにも有効です。

現在のところSFTSウイルスに対して有効なワクチンはありません。


『マダニに咬まれたことにより感染する病気は他にありますか?』

日本紅斑熱、ライム病など多くの感染症がマダニによって媒介されることが知られています。

また、マダニではありませんが、ダニの一種であるツツガムシによって媒介される、つつが虫病などもあります。

日本国内での年間報告数は
  日本紅斑熱180件
  ライム病10件
  つつが虫病400件
  程度です。

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